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全国の公立大学で任期規程の不利益変更相次ぐ
是正に向けて法的措置を含めた対応
   
  昨年(平成24年)8月10日、「労働契約法の一部を改正する法律」が公布されました。
  今回の改正で、@有期契約労働者の無期契約への転換、A「雇い止め法理」の法定化、B不合理な労働条件の禁止、の三つが新しくルール化されることになりました。
  このことにより、不安定雇用に喘ぐ労働者が安心して働き続けることができることとなり、従来から改善が求められていた不安定雇用問題の解決に向けて一歩前進することになりました。
  ところが全国の公立大学では、有期雇用契約に関する法改正が行われたにもかかわらず、法改正の趣旨を踏みにじる由々しき事態が相次いでいます。これまで「再任することができる」としていた任期に関する規程を変更し、「平成25年4月以降に任用された教員については再任しない」と規程を改悪する動きが顕れているのです。様々な問題で社会的規範となるべき大学が、このような言語道断なことをすれば、大学の評価を下げるだけでなく、法改正を骨抜きにしたとして、社会的糾弾の対象となってしまいます。
  改正労働契約法では、契約期間が5年を超えた場合、労働者の申し出によって無期契約に転換されます。しかし上記のように、大学理事者側が申し込み権を発生させないために就業規則で上限を5年に変更することは、労働条件の不利益変更にほかなりません。
  さらに問題なのは、大学理事者側が就業規則の変更を正当な手続きを経ることなく、一方的に行っていることです。
  これは、労働基準法(90条)、労働契約法(9条、10条)に明確に反する違法行為です。
  このような大学理事者側の違法行為に対して、教職員組合は団体交渉を求め、理事者側の不当な措置を是正していくことが重要です。組合の要求に対して理事者側が不誠実な対応を取り続けた場合には、労働委員会等への申し立てなど法的措置を含めた対応を行っていくことが重要です。
  一方、平成17年4月、大学の法人化を契機に教員の雇用形態を「全員任期制」に切り替えた首都大学東京では、多数の教員が雇い止めへの不安を抱えているほか、安定した教育・研究・雇用形態を保障する他大学への転出等事態が、今なお続いています。
  昨年9月24日、「任期制」の見直しを一貫して主張してきた首都大学東京労働組合は、「労働契約法の公立大学への完全適用を求める要望書」を文部科学大臣に提出しています。
  他の公立大学においても「任期制」をめぐって多くの問題が生じており、各単位組合においても、今回の法改正を契機に「任期制」の見直しに向けての取り組みを強めていくことが重要です。

2012組発第4号
2012年9月24日

文部科学大臣
 平野 博文 殿

公立大学法人首都大学東京労働組合
中 央 執 行 委 員 長 城 丸 春 夫

労働契約法の公立大学への完全適用を求める要望書

  わが国の高等教育と科学・技術研究の発展をささえる貴省のご努力に敬意を表します。今般の改正労働契約法の大学・研究機関等への適用に関わり、要望をいたします。

  首都大学東京においては、大幅な転換・改組により2005年度より教員の雇用形態について「全員任期制」がとられてきました。その結果、多くの教員が雇い止めへの不安を抱えているほか、「全員任期制」への切り替えを嫌って多数の教員が安定した教育と研究・雇用形態を保障する他大学等へ転出する、教員採用においても公募に対する応募者が極端に減少したり、公募内定者の就任辞退が生じるなど、安定した質の高い教育・研究の維持に支障をきたしています。
  現在の人事制度では、教授・准教授・助教のすべてに任期5年の任期制が適用されており、任期更新の回数については、教授は制限なし、准教授は2回、助教は1回となっています。その結果、教授もさることながら更新回数に制限のある准教授・助教の中では雇い止めへの不安を強く抱える者が多数にのぼります。とりわけ更新回数が1回に制限されている助教については、制度発足時に採用された者が3年半後には2期10年の制限期間を迎え、このままでは大量の雇い止めが発生する事態を迎えます。こうした状況の下で、本学における日常的な教育・研究、運営業務への従事よりは、他大学への転出のための研究業績づくりを優先せざるを得ないなど、学生や国民から期待される大学本来の役割遂行への支障も生じています。

  組合は制度発足以来一貫してこのような人事制度の見直しを法人に対して要求してきました。

  先般、労働契約法一部改正が国会において成立し、5年を超えて雇用契約の反復更新がなされている労働者について、無期労働契約転換が権利として認められました。この法改正について組合は、不安定雇用の氾濫がもたらした弊害の是正にむけた、大きな前進であると評価しています。とりわけ改正趣旨が、更新を前提としながら有期雇用を繰り返すという、私どもの大学のような雇用制度のもたらす「雇い止めに対する不安」の解消及び「期間の定めがあることによる不合理な労働条件を是正する」(厚生労働省労働基準局長「労働契約法の施行について」平成24年8月10日)ことにある点は大変画期的です。
  一方、一部の大学関係者からは、任期制の存続を求める声もあると聞いています。今回の法改正が、特に長期間働いた者に対する機械的な雇い止めが、道義的にも社会全体の利益という観点からも不適切であるという考えに則しているのであれば、大学の教員・研究者が適用除外になるという正当な理由は見当たりません。任期制の有無にかかわらず、大学教員はその能力が最大限発揮できる場所に移る傾向にあり、研究・教育に対する意欲や献身も任期制によって加速されるものではないからです。任期制は研究者を大胆な発想から遠ざけ、成果の約束された「安全な」研究に向かわせています。大学教員の身分が不安定化している現在、そのことを「臆病である」と非難することは困難です。また、独立行政法人化された際に一般独立行政法人職員として、非公務員化され労働基準法が全面適用された経緯などを踏まえると、大学教員に対して適用除外という例外を設けることはご都合主義と言わざるをえません。

  公立大学法人首都大学東京労働組合は、労働契約法の公立大学への完全適用を法人に求めます。貴職には、法律改正の形骸化を防ぐため、抜け道的な適用除外措置を排除する厳格な対応を求めます。

   
<参考>
  労働基準法 第9章 就業規則
    第89条(作成及び届出の義務) 条文略
第90条(作成の手続)
  使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
  A使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
第91条 以下略
労働契約法
    (就業規則による労働契約の内容の変更)
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りではない。
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