2012組発第4号
2012年9月24日
文部科学大臣
平野 博文 殿
公立大学法人首都大学東京労働組合
中 央 執 行 委 員 長 城 丸 春 夫
労働契約法の公立大学への完全適用を求める要望書
わが国の高等教育と科学・技術研究の発展をささえる貴省のご努力に敬意を表します。今般の改正労働契約法の大学・研究機関等への適用に関わり、要望をいたします。
首都大学東京においては、大幅な転換・改組により2005年度より教員の雇用形態について「全員任期制」がとられてきました。その結果、多くの教員が雇い止めへの不安を抱えているほか、「全員任期制」への切り替えを嫌って多数の教員が安定した教育と研究・雇用形態を保障する他大学等へ転出する、教員採用においても公募に対する応募者が極端に減少したり、公募内定者の就任辞退が生じるなど、安定した質の高い教育・研究の維持に支障をきたしています。
現在の人事制度では、教授・准教授・助教のすべてに任期5年の任期制が適用されており、任期更新の回数については、教授は制限なし、准教授は2回、助教は1回となっています。その結果、教授もさることながら更新回数に制限のある准教授・助教の中では雇い止めへの不安を強く抱える者が多数にのぼります。とりわけ更新回数が1回に制限されている助教については、制度発足時に採用された者が3年半後には2期10年の制限期間を迎え、このままでは大量の雇い止めが発生する事態を迎えます。こうした状況の下で、本学における日常的な教育・研究、運営業務への従事よりは、他大学への転出のための研究業績づくりを優先せざるを得ないなど、学生や国民から期待される大学本来の役割遂行への支障も生じています。
組合は制度発足以来一貫してこのような人事制度の見直しを法人に対して要求してきました。
先般、労働契約法一部改正が国会において成立し、5年を超えて雇用契約の反復更新がなされている労働者について、無期労働契約転換が権利として認められました。この法改正について組合は、不安定雇用の氾濫がもたらした弊害の是正にむけた、大きな前進であると評価しています。とりわけ改正趣旨が、更新を前提としながら有期雇用を繰り返すという、私どもの大学のような雇用制度のもたらす「雇い止めに対する不安」の解消及び「期間の定めがあることによる不合理な労働条件を是正する」(厚生労働省労働基準局長「労働契約法の施行について」平成24年8月10日)ことにある点は大変画期的です。
一方、一部の大学関係者からは、任期制の存続を求める声もあると聞いています。今回の法改正が、特に長期間働いた者に対する機械的な雇い止めが、道義的にも社会全体の利益という観点からも不適切であるという考えに則しているのであれば、大学の教員・研究者が適用除外になるという正当な理由は見当たりません。任期制の有無にかかわらず、大学教員はその能力が最大限発揮できる場所に移る傾向にあり、研究・教育に対する意欲や献身も任期制によって加速されるものではないからです。任期制は研究者を大胆な発想から遠ざけ、成果の約束された「安全な」研究に向かわせています。大学教員の身分が不安定化している現在、そのことを「臆病である」と非難することは困難です。また、独立行政法人化された際に一般独立行政法人職員として、非公務員化され労働基準法が全面適用された経緯などを踏まえると、大学教員に対して適用除外という例外を設けることはご都合主義と言わざるをえません。
公立大学法人首都大学東京労働組合は、労働契約法の公立大学への完全適用を法人に求めます。貴職には、法律改正の形骸化を防ぐため、抜け道的な適用除外措置を排除する厳格な対応を求めます。 |